カワハギの肝刺し


カワハギの肝は美味い。
冬のカワハギはお腹のなかで肝がぱんぱんに膨らんでいる。フグ目の魚は肝臓にほぼ全ての脂肪を蓄えるのだ。この脂が美味さの決め手だ。魚の脂は低融点の不飽和脂肪酸が多いので、口の中で溶ける、のではなく室温で既に溶けている。だから、口に含むとやわやわと崩れて脂の甘みが広がる。カワハギの肝の口溶けの良さに比べたら、鶏の白レバ刺しだって口どけが悪く感じてしまう。


カワハギは肝あえにされることが多い。刺身を肝を溶いた醤油で和えたものだ。醤油に肝を入れて崩したものに刺身をつけて食べることもある。僕はこの食べ方に疑問がある。カワハギの刺身は単体でも凄く美味しいものだ。しかし、肝と合わせてしまうと肝の味が強すぎて白身の味が分からなくなってしまう。肝と一緒に食べる必要はないんじゃないだろうか?もう一点、肝を醤油に溶いてしまうと肝の食感がなくなってしまう。肝のとろりとした滑らかさを味わえないなんて嫌だ。


だから肝は醤油に溶いたりせず、肝だけで食べるのが好きだ。
ただし、切っただけだと脂が多すぎて醤油とのなじみが悪い。だから今回は半日ほど煮切り醤油に漬け込んだ。食べたらもう日本酒を飲むしかないよ。