初心を思い出した

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)


高1の3月のことだ。
部活の合宿の前日、自宅で小便をして異変に気づいた。ワインレッド。私の小便はワインでできてるの、なんて悠長なことは言えず、足が震えた。見事な血尿だった。慌てて泌尿器科に駆け込むときに、偶然持っていったのが「ウィルス進化論」だ。

ウィルスこそが進化を引き起こすためのオルガネラである。

水平進化という考え方に衝撃を受けて「大学で生物をやろう」と決意したのは、尿検査の結果を待つ待合室だった。
あれから、もうすぐ9年が経とうとしている。


「生物と無生物のあいだ」を読んで思い出したのは、やっぱり生物学が好きだ、ということだ。実験動物を食べることにばかりに興味が移って、たどりついたのが今の仕事だ。だけど、真理と名誉を求めて苛烈な研究競争を戦う研究者の地道な姿勢にあこがれていた。自分にはそこでやっていく才覚と情熱はない、競争を降りてしまったのだ。どうしても食べ物を作りたかった、というのは単なる言い訳なのかもしれない。


明日になれば、今年の仕事が始まる。生物学の競争は降りたけど、食品を作る競争が待っている。
腹を減らしておくことにしよう。